ホーム » 教員紹介 » 稗貫 俊文

稗貫 俊文

知的財産法、経済法I・II

プロフィール

1946年札幌市生まれ。法学博士(北海道大学)。1978年北海道大学大学院法学研究科博士課程中退後、同大学助手。その後、図書館情報大学助教授、金沢大学教授、北海道大学教授、同大学大学院法学研究科教授、同大学法科大学院教授を経て、2010年4月より北海学園大学法科大学院教授。

写真:稗貫 俊文

■講義のねらい・特徴的な取り組み

経済法I・II

出発点で重要なのは、大雑把でよいから独占禁止法の全体像を把握することです。すなわち、講義では、①独占禁止法の体系と基礎概念を把握すること、②主要な法改正の歴史を概観すること、③独占禁止法のエンフォースメント(公正取引委員会の事件処理手続、刑事裁判と民事裁判)を概観します。
各論に入ります。①私的独占の禁止、②不公正な取引方法の禁止、③不当な取引制限の禁止、④企業結合規制という独禁法の禁止の4本柱を4つの系と整理して、それぞれを詳しく学びます。講義では、前期に私的独占と不公正な取引方法、企業結合規制、後期に不当な取引制限と独占禁止法のエンフォースメントを勉強します。
1年後に、もう一度出発点にもどって、独占禁止法の全体像が豊富化され体系化されて形で身についているか、自分で確認できるでしょう。

応用力、すなわち、自分で、具体的事例に独禁法を適用して違法性を判断する訓練が肝要です。講義では、先例的価値の高い判決・審決を含めて、違反事例をできるだけ多く紹介します。それによって、自分の知識が具体的な事例に応用可能となるための前提を提供します。
なお、取引上の優越的地位の濫用など不公正な取引方法の一部や、講義では十分な時間が割けない下請代金遅延等防止法などの実体法と手続法を詳しく勉強してください。それは中小企業の多い北海道ではとくに求められる独禁法関連の実務的知識です。

知的財産法

特許法、著作権法、商標法などの実定法が何故「知的財産法」という総称で統括されるのか、あるいは何故「無体財産法」と言われたのか。それは量的な制約をもたない知識・情報の性質に由来する。知識・情報は何度使用しても消しゴム(有体物)のようにすり減ることはなく、多くの人に分け与えても小さくなることはない。このような性質は人々の創造的活動の基礎になり、文化、文明の基盤になる。
しかし、この様な知識・情報の性質は、知識・情報を経済財として考えると困ったことを引き起こす。すなわち、初めから模倣、盗用されることが分かっている経済財に、誰が時間と資金と労力を投下するだろうか、ということである。これをそのままに放置すれば、発明・技術革新などの面で産業は停滞するかもしれない。報酬を求めないという誇り高い芸術家であっても模倣、盗用の横行を放置して良いとは言わないであろう。
量的な性質をもたない経済財の利用に一定の手続きにより排他権を与えて、人為的に希少性を作り出し、投資を誘引する法的な装置。これが知的財産権といってよいであろう。
では、どのような手続きと基準で、誰に排他権が与えられるのか。排他権の侵害にどのような法的な救済が与えられるのか。それは民法の不法行為とどのように違うのか。他方、なぜ知的財産権は保護の期間や保護の範囲が限定されるのか。権利の有効性が問われ、しばしば権利が無効になるのはなぜか。それらは民法の物権とどのように違うのか。さらに、ある場合には権利を否定し権利の効力を制限するのは何故か。
こうしたことを何故か、何故かと問いながら勉強すれば、知的財産権制度の意義は感得されると思います。講義は、受講する皆さんをそのような理解の地平に導くものでありたい。

■少人数教育のメリットを活かして欲しい

私は2010年4月から北海学園大学の法務研究科の教壇に立つ機会を与えられました。法務研究科の教員の皆さんが個々の法科大学院生の皆さんの実情をよく把握されていることに驚きました。○○君は最近急速に能力が伸びているとか、△△さんは今のままがんばれば合格するだろうという具合に、学生の事情をよく理解されている。また、新入生歓迎会に参加してみると、事務の皆さんも親切で、法科大学院生は互いにギャグや冗談を言い合う雰囲気があり、まとまりが良いよいという印象をもちました。
講義においては、学習のポイントとなるところや、一通りの勉強で十分なところなど微妙なニュアンスを伝える講義ができることがわかりました。これが少人数教育の良いといころだろうと思います。

■本学で法曹を目指す学生へ

北海道開拓の伝統を受け継ぐ本学の精神からは、ここから巣立つ法曹は北海道という地域の実情、その各地域の実情に精通している者でなければならないでしょう。そして、人の痛みが分かる法曹、人の愚かさや間違いやすさに共感しながら、常にルールの基づく紛争解決の精神を持つ法曹が育つことが望まれます。
北海道の地域の実情が分かる法律家は世界(東アジア)に繋がる可能性を秘めています。韓国、台湾、中国など東アジア地域の人々は北海道の自然と産品(農産物・海産物)を選好し、観光や輸出入取引で北海道とつながりを強めています。ここに生きる法曹は、中国語や韓国語を勉強し、また、これらの経済成長の著しい国の法律を勉強することで、新しい仕事と交流の機会を得るでしょう。北海道からそのような法律家が育って欲しいと思います。